脳卒中

急性期脳梗塞 治療適応 ここだけ覚える

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急性期脳梗塞の治療はtPAによる血栓溶解療法が主流ですが、近年カテーテルを用いた血栓回収療法の有効性が示され、急性期脳梗塞の治療適応が大きく変化してきています。
そんな中、実際の現場では治療ができる施設とできない施設に分かれてきています。また、カテーテル治療ができる施設においても、どのような症例が適応なのかがまだ医療スタッフ全員に浸透していない現場が多いのではないでしょうか。
本記事では、「経皮経管的脳血栓回収機器 適正使用指針 第3版(2018年3月)」を参考にして、その適応について現場で使えるように簡潔にまとめてみました。

急性期脳梗塞でまずチェックすること

時間

最終健常時刻からどれくらい時間が経っているか。

発症前mRS(modified Rankin Scale)

発症前の日常生活がどれくらい自立していたか。

mRS

Grade0:症状なし

Grade1:症状はあるが特に問題となる障害なし(日常の勤めおよび活動は可能)

Grade2:軽度の障害(以前の活動はできないが、介助なしに身の回りのことができる)

Grade3:中等度の障害(何らかの介助を必要とするが、介助なしに歩行可能)

Grade4:比較的高度の障害(介助なしに歩行や身体的欲求を満たすことが困難)

Grade5:高度の障害(寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りが必要)

Grade6:死亡

NIHSS(NIH Stroke Scale)

神経症状の重症度。重度ほど点数が高い。

NIHSS項目→意識レベル(覚醒、質問、従命)、注視、視野、顔面麻痺、運動(右上肢、左上肢、右下肢、左下肢)、運動失調、感覚、言語、構音障害、消去/無視

ASPECTS(Alberta Stroke Program Early CT Score)

頭部画像検査(CTもしくはMRI DWI)で早期虚血像の範囲。範囲が広いほど点数が低い。

皮質→大脳皮質(中大脳動脈領域6ヶ所)、島皮質
皮質下→尾状核、レンズ核、内包

画像評価

閉塞血管が主幹動脈(内頚動脈IC、中大脳動脈M1,M2、脳底動脈BA)かどうか。

時間ごとの脳梗塞急性期治療適応 

①4.5時間以内

tPA が第一選択。

②6時間以内

IC or M1、発症前mRS0-1、ASPECTS6以上、NIHSS6以上(軽症でない)、18歳以上→血栓回収 グレードA(行うよう強く勧められる)

③6時間以内

M2やBA、発症前mRS2以上、ASPECTS5以下、NIHSS5以下→血栓回収は症例ごとに検討。グレードC1(行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠がない)

④6時間以降16時間以内

IC or M1、発症前mRS0-1、ASPECTS7以上、NIHSS10以上(軽症でない)→血栓回収 グレードA(行うよう強く勧められる)

⑤24時間以内

IC or M1、発症前mRS0-1、ASPECTS7以上、NIHSS10以上(軽症でない)、DWIとPerfusionのミスマッチ→血栓回収 グレードB(行うよう勧められる)

治療適応のまとめ

時間ごとに適応をまとめると下記のようになるでしょうか。
4.5時間以内であればtPA。主幹動脈閉塞があれば血栓回収のスタンバイも行う。
6時間以内の際は②か③か判別し、②に当てはまれば血栓回収、③に当てはまれば血栓回収は症例ごとに検討。
6時間以降16時間以内で④に当てはまれば血栓回収。④に当てはまらなければ⑤に当てはまるか判別し、当てはまれば血栓回収。
16時間以降24時間以内であれば⑤に当てはまるか判別し、当てはまれば血栓回収。
施設ごとにも適応の考え方はことなると思いますので本記事の記述はあくまで参考程度にしてください。
ご意見等あれば是非お願い致します。

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