今回はくも膜下出血の慢性期の合併症である正常圧水頭症の治療について書きたいと思います。
水頭症
正常圧水頭症は、髄液という頭の中のお水が脳内の脳室というスペースに溜まって症状を出す病気です。なので、その治療は脳室に溜まった髄液を頭蓋内から頭蓋外に出すということになります。代表的な手術が溜まった髄液をお腹の腹腔内に逃してあげる、脳室腹腔短絡術という手術がやられることが多いです。
脳室腹腔短絡術(VPシャント)の手順
脳室の中にチューブの先端を入れるのですが、脳室は前側と後ろ側に広がった空間があるので、左右どちらか(右からが多い)のおでこのちょっと上辺りか、左右どちらかの後頭部から入れます。チューブは脳室から脳、脳の周りを保護する硬膜、頭蓋骨を通して皮下に出した後に、耳の後ろ、首、胸と皮下を通してお腹に達します。お腹ではお腹の筋肉、腹膜、を通して腹腔内にチューブを入れます。腹腔内は上側の肝臓の上に沿って入れたり、下側の骨盤近くのスペースに入れたりします。チューブの途中に鍵穴のような形をした「バルブ装置」があり、そこでチューブを流れる圧の設定を行います。
通常は全身麻酔で行い、1−3時間ていどで終わります。
脳室腹腔短絡術(VPシャント)の合併症
合併症はいろいろありますが、手術する際に共通する合併症としては出血と感染があります。この手術では出血は、皮膚からの出血に加え、頭の中の出血(脳出血、硬膜下出血、硬膜外出血など)、腹腔内の出血などが考えられます。頭の中に出血した場合は、場所によっては麻痺、言語障害、意識障害などの後遺症となることもあります。
感染はこの手術では厄介なものになります。この手術で感染を起こすと、皮下に通したチューブを介して頭の中に感染が及ぶ危険があるのです。その場合は髄膜炎という怖い感染症になります。髄膜炎については別途お話をしたいと思います。さらにシャントチューブが感染した場合はせっかく入れたチューブを抜かないといけません。その他、お腹の中のトラブルとして、チューブが腸の中に迷入したり、その他腹腔内の臓器を損傷するという可能性もありますが、チューブは柔らかいのでめったには起こりません。
あとは稀ですが、胸のあたりの皮下を通す際に胸の壁を突き破って肺を損傷するという自体も考えられます。この場合は肺から空気が抜けて気胸という状態になり、息がしづらくなります。
また、時間が経過してチューブが詰まったり、ちぎれたりする恐れもあります。そうすると髄液が頭の外に逃げていかず、また水頭症の症状が出てしまいます。その場合は、中部を入れ替える手術が必要になります。
脳室腹腔短絡術(VPシャント)の術後
シャントチューブが入ったら、症状や画像を見ながら、髄液がしっかり抜けるように、もしくは髄液の抜けすぎないように、圧の設定を調整します。髄液が抜けすぎると硬膜下血腫の合併症が起こる恐れがあります。バルブは磁石で動くようになっており体の表面から専用の機械を当てて、目的の圧に合わせます。圧はレントゲンを取るといくつになっているか確認できます。シャントチューブが入っている人がMRIを撮るときは、その都度圧設定の確認が必要になります。
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