急性硬膜外血腫は頭を打った際に気をつけつべき出血のひとつです。
英語ではAcute epidural hematomaもしくはAcute traumatic epidural hematomaといい、AEDH もしくはATEDHと略すこともあります。
急性硬膜外血腫についてまとめました。
急性硬膜外血腫とは?
脳は何層もの膜に覆われて保護されています。まず、脳の表面には軟膜、くも膜があり、さらに外側には硬膜という硬い膜があり(2重になっている)、その硬膜が頭蓋骨を裏打ちしています。
急性硬膜外血腫はその硬膜と骨の間のスペースに急性に血腫ができる状態です。
急性硬膜外血腫の頻度は?
急性硬膜外血腫は入院が必要な頭部外傷の1−2%に起こり、さらに致死的は外傷性出血の5−15%を占めています。
急性硬膜外血腫の原因は?
頭をぶつけて頭蓋骨が骨折した場合、頭蓋骨を裏打ちしている硬膜という脳を保護する膜にある血管(中硬膜動脈)が切れて急性硬膜下血腫になることが多いです。また、静脈洞という硬膜の中にある静脈の通り道が裂けて硬膜外血腫となることもあります。
急性硬膜外血腫ではどんな症状がでるのか?
急性硬膜外血腫がどんどん増えていくと、脳がだんだん押しつぶされていき、脳圧迫による症状が出てきます。頭蓋内の圧が上がると、頭痛、吐き気、嘔吐などの症状が現れ、さらに運動神経が圧迫されると麻痺症状、言語領域が圧迫されると言語障害といった症状が見られます。さらに、圧迫が強くなると意識障害が出てきて、昏睡状態となります。いずれは生命の中枢といわれている脳幹が押しつぶされ致命的な状況となります。
意識清明期に注意!
急性硬膜外血腫でははじめは意識状態に問題がなくても、12時間以内に80%は意識障害が悪化します。
なので、頭をぶつけて意識に問題がなくても、強い打撲の場合は病院でCT検査をしたほうがいいでしょう。
急性硬膜外血腫の診断は?
検査は頭部CTを行います。典型的な画像所見として凸レンズ上の血腫が脳と頭蓋骨の間のスペースにみられます。
急性硬膜外血腫の治療は?
急性硬膜外血腫により致命的な状況を回避するために、緊急で硬膜外血腫を除去する手術が治療として必要となります。
救急外来ではとりあえず少しでも圧迫の影響を減らすため、脳の圧を下げる点滴を投与したり、骨に小さな穴を開けて一時的に血腫を減圧したりもします。
より低侵襲な治療
急性硬膜外血腫の低侵襲な治療として、カテーテルで出血源である中硬膜動脈を閉塞し、小さい穴を開けて血腫を除去するという戦略も報告されています。メリットとして全身麻酔ではなく局所麻酔でできるということが挙げられますが、一般的な治療ではありません。参考文献
急性硬膜外血腫の予後は?
急性硬膜外血腫は硬膜の外からの圧迫であり脳を直接圧迫しないので、他に硬膜内の損傷がなければ適切な対応で完治しうる疾患です。
手術例の死亡率は5−10%と言われています。手術前の状態があまりにも良くない場合は予後もよくないことが知られています。
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