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経眼窩内視鏡アプローチは脳神経外科の戦略をどう拡げるのか

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経眼窩内視鏡アプローチは脳神経外科の戦略をどう拡げるのか

― 開頭術・経鼻術との共存を前提とした“補完的アプローチ”の可能性 ―

はじめに

近年、内視鏡技術の進歩により、脳神経外科の低侵襲手術の選択肢は着実に広がってきました。その中で注目を集めているのが、経眼窩内視鏡アプローチ(Transorbital Endoscopic Approach: TEA)です。

しかし一方で、「従来の開頭術(Craniotomy)や経鼻内視鏡手術(Transnasal Endoscopic Approach)で十分ではないか」と疑問を抱く声も多く聞かれます。本記事では、Vuralらによる2021年の系統的レビュー論文をもとに、TEAの有用性・安全性・役割を従来法との比較も交えて考察します。

TEAの解剖学的・臨床的特性:Vural et al., 2021のレビューから

この論文では、TEAに関する42報の文献と193例の患者データをレビューし、さらに4体の屍体解剖を組み合わせた網羅的な分析を行っています。TEAは、眼窩を4象限に分け、それぞれのアプローチ(SLC、PC、LRC、PS)を通じて、前頭蓋底・中頭蓋底の外側部にアクセス可能であることが示されています。

特に重要なのは、解剖学的ランドマーク(SOF, IOF, GSWなど)を明示したことと、合併症・再建法に関する整理です。術後のCSF漏は4.1%と比較的低率であり、眼球の拍動や複視など一部の合併症も多くは一過性または軽度でした。

TEAは「代替」ではなく「補完」アプローチである

Vuralらのスタンスは明確です:「TEAは既存の開頭術や経鼻手術に代わるのではなく、補完的な戦略として位置づけるべき」という立場です。

つまり、すべての病変に対してTEAが第一選択になるわけではありませんが、従来法では直達困難な病変に対して短いルートで低侵襲に到達可能という利点があります。

病変の位置 最適アプローチ
鞍上部・篩板部・プラナム部(正中) 経鼻内視鏡
中頭蓋底外側・眼窩上壁・蝶形骨外側部 経眼窩内視鏡
深部腫瘍・広範な側頭葉病変 開頭術

否定派への反論:なぜTEAを学ぶべきか

TEAに否定的な意見としてよく聞かれるのは、「視野が狭い」「開頭で見える」「眼窩操作が怖い」などです。しかし、Vuralらのデータでは解剖ランドマークに基づいた安全なアプローチと適切な再建により、合併症は最小限に抑えられることが示されています。

また、眼窩内容物が再建材を内側から支える自然の補助機構も重要です。整容性を重視する現代において、皮膚切開が最小限で済むTEAの意義はますます大きくなっています。

まとめ:選択肢を持つことは力である

TEAはすべてに万能なアプローチではありません。だからこそ、特定の状況に対する最適解としての価値があります。病変の位置や広がり、患者背景を考慮して開頭術・経鼻術・TEAを使い分ける視点こそが、今後の脳神経外科に求められる柔軟性だといえるでしょう。

参考文献

  • Vural M, et al. Transorbital endoscopic approaches to the skull base: anatomical features, surgical indications, and clinical outcomes. A cadaveric study and systematic review. Neurosurgical Review. 2021.

-脳神経外科, 頭蓋底

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