経眼窩内視鏡アプローチの最前線:脳底外科の新たな選択肢
近年、頭蓋底外科における新たなアプローチとして「経眼窩内視鏡アプローチ(endoscopic transorbital approach)」が注目を集めています。
これは、眼球と眼窩骨の間の自然な空間を利用し、最小限の侵襲で頭蓋底深部へ到達できるアプローチです。2025年に発表されたNeurosurgical Focus Video誌の特集号では、この手法の現状と可能性について、世界各国のエキスパートによる動画と論文がまとめられています。
なぜ今、経眼窩アプローチなのか?
従来、視神経管外側やMeckel腔、錐体尖部といった領域へのアプローチは、経鼻的手術では限界がありました。一方で、経眼窩アプローチはこれらの「経鼻では届かない領域」に直線的かつ効率的にアクセス可能であり、脳の牽引を最小限に抑えられるという利点があります。
内視鏡 vs 顕微鏡:異なる視点が選択肢を広げる
外側眼窩切開術や眉毛上アプローチと同様に見えるかもしれませんが、経眼窩内視鏡アプローチはアプローチベクトルの直交性に特徴があります。顕微鏡主体の従来法に対し、本アプローチは内視鏡に依存することで、より直線的で深部までの視野が確保可能です。
拡張技術により柔軟性はさらに向上
近年提案されている拡大経眼窩アプローチでは、眼窩縁を部分的に切除することで、錐体尖部や前床突起、後頭蓋窩といった深部までの到達が可能になっています。
国際的な広がりと今後の展望
このアプローチの広がりに伴い、Endoscopic TransOrbital Societyが設立され、国際的にも注目が集まっています。
まとめ
経眼窩内視鏡アプローチは、今後の脳底外科手術における強力な選択肢となるでしょう。新しい手術法に興味のある方は、この技術の動向に注目すべき時期に来ています。
参考文献
- Schwartz TH, Kong DS, Moe K. Endoscopic Transorbital Surgery of the Orbit, Skull Base and Brain. Springer; 2024.
- de Notaris M, Kong DS, Di Somma A, et al. Superior eyelid transorbital approaches: a modular classification system. J Neurosurg. 2024;141(1):278–283.