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顕微鏡なしでここまでできる?―内視鏡による大脳鎌中部髄膜腫摘出の実際

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内視鏡補助下同側大脳間裂アプローチによる大脳鎌中部髄膜腫摘出:技術的進歩と教育的学び

今回は、2023年にBrain Sciences誌に掲載された症例報告「Endoscopic Ipsilateral Interhemispheric Approach for Middle-Third Falcine Meningioma」(Zhangら)をご紹介します。これは、大脳鎌中部の髄膜腫に対して、完全内視鏡下かつ同側からの大脳間裂アプローチで摘出に成功した貴重な症例です。

なぜこの症例が注目されるのか?

  • 大脳鎌中部髄膜腫は、運動野や感覚野などの重要な皮質下に位置し、また多数の架橋静脈が存在するため、摘出が非常に困難な腫瘍です。
  • 従来は顕微鏡下での反対側間脳裂アプローチが多く用いられていましたが、本症例では内視鏡単独で、同側から安全に全摘出(Simpson II)を達成しました。

手術アプローチの工夫

この手術では、術前のナビゲーションで2本の重要な架橋静脈を確認し、それらの「間の安全帯」から内視鏡を挿入しています。脳の牽引は最小限にとどめ、腫瘍の血流遮断→内部減圧→被膜剥離という段階的な操作を、すべて内視鏡下で実施しました。

重要なポイント:静脈損傷をどう防ぐか?

同側アプローチでは、通常「術野上の静脈が邪魔になる」と考えがちです。しかし本症例では、静脈を回避しながら視野を確保できる内視鏡の利点(多角的視野、死角の少なさ)を最大限に活用しています。実際、架橋静脈は温存され、術後合併症も認められませんでした。

術者の熟練度も重要な要素

この術式が成功した背景には、著者らの施設で1000例以上の内視鏡手術の経験があるという実績があります。内視鏡操作には独自のトレーニングが必要であり、すぐに真似できるものではないことも強調されています。

若手脳外科医・研修医へのメッセージ

  • 本症例は、従来の常識(「同側は危険」)を、技術の進歩で乗り越えた好例です。
  • 内視鏡の操作スキルは、これからの脳外科でますます重要になります。特に、死角が問題となる深部病変では、内視鏡の有用性は顕著です。
  • 術前計画・ナビゲーション・血流遮断の順序立て・脳保護など、1症例の中に多くの学びがあります。

まとめ

大脳鎌中部の髄膜腫に対する内視鏡補助下同側大脳間裂アプローチは、適切な症例選択と術者の熟練により、安全かつ有効な手術手技となり得ます。今後、症例の蓄積と標準化が期待されます。

参考論文:
Zhang G, et al. Endoscopic Ipsilateral Interhemispheric Approach for Middle-Third Falcine Meningioma: A Case Report and Literature Review. Brain Sci. 2023;13(7):1085. https://doi.org/10.3390/brainsci13071085

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